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高山病

高山病とは

高所では大気圧が下がるため、酸素量もそれに応じて少なくなります。人間の身体は少し時間をかけることで酸素の少ない状態に慣れていくことができます。しかし、十分な時間をかけずに高度を上げると、身体が酸素の少ない状態に慣れることができず、高山病になります。どの程度の高度や時間で高山病があらわれるかは個人差がありますが、一般的には2500m程度の高所であれば発症する可能性があるとされています。日本では数えるほどしかありませんが、海外は自動車で上ることができる3000~4000m程度の高所が観光地になっている場合もあり注意が必要です。また高齢者の場合は、1500m程度の高度でも発症する可能性があります。


高山病になりやすい人

高山病になりやすいかどうかは、登山する際の体調、気候など様々な要因に加えて、その人の遺伝的要因なども加わっていると考えられ、一概に言うことはできません。しかし、高齢者の場合、身体の様々な器官が加齢のために弱まっていること、特に循環器系の柔軟度が下がっていることから高山病を発症しやすいとされ、また小さなお子様は身体の様々な器官が未発達なため、同様に発症しやすいと考えられています。
高山病が重症化すると、低酸素状態が身体に与える影響によって、肺がむくんでしまい、水がたまる「高所肺水腫」や、同様に脳がむくんでしまう「高所脳浮腫」などを発症することがあります。特に高所肺水腫については、遺伝的な要素が強く、高山病の初期症状があらわれていなくても突然発症することも有りますので、注意が必要です。


高山病の重症度

高山病は、重症度によって1.山酔い、2.高所肺水腫、3.高所脳浮腫の3段階にわけて考えられます。2.高所肺水腫以降は生命にかかわることがあります。

1.山酔い

標高2000m以上(高齢者の場合は1500m)の高値で起こります。
主症状は頭痛で、それに加えて以下の症状が1つ以上あらわれていることで診断されます。

  • 食欲低下、吐き気・嘔吐などの消化器症状
  • 全身の倦怠感、脱力感
  • めまい、立ちくらみ
  • 不眠、睡眠中も何度も目覚める、息苦しさといった睡眠障害

2.高所肺水腫

安静にしていても、呼吸が困難になる、咳が出る、胸が締めつけられるような胸部圧迫感、頻脈、歩行困難などの症状があらわれます。ほとんどの場合山酔いと合併して発症しますが、数時間で急激に進行してしまうこともあり、注意が必要です。

3.高所脳浮腫

山酔いの症状に加えて、まっすぐ歩けないほどの運動失調、日時やいま自分がどこにいるかわからなくなる見当識障害などがあらわれ、放置しておくと昏睡に至り、命に関わります。


高山病の治療

高山病になったら、まず下山することが大切です。そのまま強行すれば、どんどん重篤な状態になっていきます。
その上でダイアモックス(一般名アセタゾラミド)という肺気腫やメニエール病などの治療に使う薬を登山の前日から服用することで山酔いを予防することができ、また、山酔いの症状があらわれてから服用することで、症状を早急に改善します。この薬を服用すると血中の水素イオン濃度が上がり、水素イオンが呼吸中枢を刺激することで換気量が増えるという作用があります。ただし、サルファ剤にアレルギーのある方は副作用を起こす可能性があるため、服用できません。
また、デキサメタゾンという薬は、副腎皮質ホルモンの一種で、山酔いと高地脳浮腫の予防と症状緩和に効果が認められています。ただし、この効果は薬を服用している間だけですので、登山中に薬が切れた場合急激に高山病の症状があらわれることがあるため、少し多めに携行することをお勧めしています。
さらに、血管拡張薬の一種であるニフェジピンも高地肺水腫の予防、治療効果があることが知られています。


高山病予防のためにできること

高地に行く場合、まず強行軍を避け余裕のある日程を組むことが大切です。高山病の原因は身体が低酸素状態に慣れないことですから、急激に高度を上げることが最大の発症原因となります。標高3000m以上の高地では、登坂は1日標高で300m以内に留めるようにしましょう。また高度が1000m上がるたびに1日休息することをお勧めします。
荷物が多すぎると呼吸器系にかかる負担も大きくなりますので、荷物は控えめにして、決して急がずゆっくり歩きます。
また、高地では空気が乾燥しているため、登山という運動によって脱水を起こす可能性もあります。水分補給を忘れずに、また夜間の乾燥防止のためのマスクなども用意しておきましょう。
高地で、お酒を飲んだり、睡眠薬、精神安定剤などを服用したりすると、睡眠中に呼吸が乱れる可能性があり高山病を誘発することがありますので、注意が必要です。
一番大切なことは、ご自身の体力、健康状態にあわせることです。海外旅行で高地の観光地などに行く場合、急激に高度が上がってしまうこともあります。呼吸器系の慢性疾患をお持ちの方は、医師とよく相談した上で行動するようにしましょう。
また、健康な方でも高地に滞在する、登山するといった場合は予防薬としてダイアモックスを高地に行く前日から医師の指示に従って服用するようにしましょう。